第10回 JDA九州ディベート大会 決勝戦
 
2012年12月9日
場所:九州大学伊都キャンパス

論題   「日本は道州制を導入すべきである」(2012年JDA秋季大会論題)
肯定側 チーム神大甲 (安村崇、森駿介、蓬莱則宏)
否定側 私の生活が第一(全国教室ディベート連盟 中国支部)(森田 洋明(もりた ひろあき)・浅尾 友里愛(あさお ゆりあ))

下の計算式により、5票対8票で否定側「私の生活が第一」が優勝しました。また、専任ジャッジ6名の合議により決定する最優秀ディベーターには、安村崇さんと森田洋明さんが、優劣付けがたく両名が選ばれました。

決勝戦計算式: 専任ジャッジ(6名)は各1票、聴衆すべて(回収率は9割程度)の票数44票を7票とみなし、比例配分しました。その結果、専任ジャッジ 票は2票対4票、聴衆ジャッジ票は18対26を2.9票対4.1票と計算し、合計票数4.9票対8.1票で否定側「私の生活が第一」が優勝しました。

(以下の文章は録音およびあらかじめ用意された原稿に基づいて文字起こしを行ったものです。明らかな言い間違い等もそのままの可能性があります。)

○・・・  それでは、第10回JDA九州ディベート大会決勝戦を行います。まずは、

肯定側第1立論。時間は6分間です。始めてください。
○・・・  はい。今から、肯定側第1立論を始めます。
 私たちは、道州制を導入すべきだと主張します。以下に、プランを提示します。
 1.日本における都道府県制を廃止し、現行の市町村を維持しつつ、全国を11の道・州に区分けします。また、国は道・州に対して外交・防衛・貨幣を除く権限を委譲します。なお、日本の首都としての機能は東京に残します。
 2.国と道・州の財源については、道州制採用後も今まで通り、国が主体となって道・州間の財政を補助し、道・州間の格差を調整します。ただし、国がもつ 徴税権を道・州に完全に委譲しますが、主な国税である消費税・所得税・法人税のうち、所得税・法人税の一部を除くすべてを地方の財源とし、所得税・法人税 の一部とその他の国税は国の財源とします。また、その委譲に伴い、漸次、国から道・州への補助金を減らし、最終的には補助金の交付を廃止します。なお、補 助金交付の廃止と並行して、道州間で水平的財政調整を行います。
 このプランにより、以下に挙げる2つのメリットが生じます。
 @日本のプライマリーバランスの適正化
 (@)現状分析
 現在、日本財政は大きな借金を背負っています。以下、資料を引用します。財務省ホームページ、「公債残高の累増」より、引用開始。
 「公債残高に地方の債務などを加えた国・地方の長期債務残高は、平成22年度末に862兆円(対GDP比181%)に達する見込みです。」引用終了。
 これと合わせて、平成22年度の日本の歳入が約92兆円であり、またその割合の48%が公債金であることを考えても、日本の財政状況が極めて危険な状況にあることは自明であり、早急に対処する必要性が大きいと言えます。
 (A)発生過程
 この財政状況を変えるために、道州制を導入することが非常に有効な手段です。それは、2点の理由から説明できます。
 (a)道州制に移行することで、国、地方の歳出を減らすことができる。
 (b)経済活性化により、税収の増加が見込める。
 まず、(a)の理由から説明します。資料を引用します。佐々木信夫、『道州制』ちくま新書53ページより、引用開始。「NPO法人地域自立政策研究所の 明確化研究会が各レベルの政府の役割を整理し道州制へ移行するなど本格的な改革を行うなら、地方分だけで14兆円、国も含めると20兆円規模の歳出削減が 可能になると報告している」引用終了。
 道州制を導入すると、二重行政によるムダを省くことができるなど、国と地方共に歳出を削減することが可能になります。
 次に、(b)の理由について。資料を引用します。
 21世紀政策研究所の論文「地域経済圏の確立に向けた道州制の導入と行政改革」より、引用開始。
 「わが国の公共投資の分野別配分は国の意思決定に依存していることが多く、地域の生産力を最大限高めるようにはなっていない。(中略)社会資本の配分を 産業間で適正化することによって、同じ資源量であっても地域の生産額を増やすことが可能であるし、現在の生産額であればより少ない資源で実現することがで きるのである。」引用終了。
 社会資本の配分を適正化することで地域が活性化し、その結果地域の税収が増加します。
 (B)重大性
 このように、道州制を導入することで、国、地方は歳出を減らすことができ、また地域経済が活性化することで税収が増加します。したがって、日本のプライマリーバランスを適正化することが可能になるのです。
 次に、メリット2になります。
 A住民のニーズに即した行政サービスの供給
 (@)現状分析
 現在地方の自治体が政策を行うに際しては、国の認可をとりつける必要があるなど、極めて自由度が低く非効率であるといえます。その証拠資料を引用しま す。広島県ホームページの、「第3章 道州制導入の意義及び目的」より引用開始。「従来、県域あるいはブロック毎に国の各省庁の地方機関が設置され、地域の行政事務を行っているが、@各省庁ご とに縦割り的に事務事業の執行がされていることから、他の関連する事業と一体的、総合的に施策を実施することが困難であること、(中略)など現在の国の地 方機関のあり方には多くの課題がある。」引用終了。
 (A)発生過程
 現状の全国一律の縦割り的行政サービスでは、地域それぞれのニーズに即しているとは言えず、道州に権限を委譲することにより、地域に即した行政サービスを効率よく供給できることが可能となります。
 (B)重要性
 例えば、河川管理事業などは、河川ごとにその地域に適した政策がなされるべきですが、河川は県境をまたいでしまうため管轄が変わってしまい、非効率が生 じてしまいます。ここで、資料を引用します。九州地域戦略会議の道州制の「九州モデル」答申より引用。引用開始。「道州や基礎自治体は治水対策上優先順位 の高い箇所から効率的に事業を実施し住民の安全安心を守るとともに、河川流域の自然環境、歴史、文化など地域の個性を活かし、住民と連携した川づくりを展 開する。また、渇水時の広域的な水利調整を迅速に行うことや道州がダムを一元的に管理し弾力的・効果的な水の供給を行うことで、地域社会と住民生活を支え る。」引用終了。
 また、河川だけではなく環境問題や疫病など、自治体は様々な問題に対して対処・管理する必要がありますが、その都度、国の対策方針を仰いでいては効率が 悪く、対応が遅れてしまいます。しかし、プランに沿って道州制を導入することで、一元の対策本部を設置するなど、迅速な対応をすることが可能になります。 資料を引用します。全国知事会ホームページの「道州制導入のメリットと課題等について」より、引用開始。「現在の府県域を超える大規模災害発生時に、他団 体への応援要請、国・関係防災機関との連絡調整等が簡素化し、迅速な対応が可能になる。また、被害情報収集・応急危険度判定等、業務の運用を広域的に標準 化し、迅速かつ適切な執行が可能となる。」引用終了。
 このように、早く、的確な行政を行うという意味でも、効率性を向上させることは極めて有効なのです。
 以上、@国のプライマリーバランスの適正化、A地域に即した行政サービスの供給、という2つのメリットが発生するため、私たちは前述のプランによって道州制を導入することを主張します。
 時間が余りましたので、もう一度、ラベルについて確認します。私たちが主張するメリット。@日本のプライマリーバランスの適正化。発生過程においては、 aとb、二つがあります。aは道州制に移行することで、国、地方ともに、歳出を減らすことができる。bは、経済活性化により税収の増加が見込めること。メ リットAに関しましては、地域に即した行政サービスの供給・・・です。

○・・・  終わりです。

○・・・  お願いします。

○・・・  

否定側質疑。時間は3分間です。
○・・・  はい。では、始めます。よろしくお願いします。  
 それじゃあ、メリット1点目からお伺いします。日本のプライマリーバランスの正常化ということでしたが、現在、日本は多くの借金を抱えているということで間違いないですね。
○・・・  そうですね。
○・・・  それを正常化することが道州制によってできるということでしたでしょうか。
○・・・  はい。道州制によって日本のプライマリーバランスを適正化することが可能になります。
○・・・  適正化ということは、どういうことを示しているのですか。
○・・・  適正化についてなんですけど、現在、2012年度、日本の借入金などの資本割合なんですけど、こちら、外国資本の割合が約8.7%と、非常に 大きな、過去最大の割合を占めております。これが、これ以上、どんどんどんどん外国からの資本流入が入ってきますと、いずれ、ギリシャなどで想定されるよ うなデフォルトが想定されます。
○・・・  つまり、その外国資本の8.7%というものが、今回問題としていることということなんですね。
○・・・  問題にしていることの一例ではあります。
○・・・  それは金額にして幾らですか。
○・・・  そうですね。では、ちょっと時間軸が違うんですけども、こちらで考えると862兆円と考えていただいて、そのうちの8.7%、約1割と考えていただいて、大体、86兆円弱ですかね。
○・・・  ありがとうございます。では、これを、道州制を導入することによって、何年間で適正化が行われるのでしょうか。
○・・・  そうですね。具体的な年間については、すいません。こちら、試算は行っておりません。
○・・・  では、1年間にどれほど、削減ができるという見通しなんでしょうか。
○・・・  そうですね。1年間、年と言うよりも、私たちが立論で述べているところなんですけども、資料を引用させてもらったとおり、まず地方で14兆円の削減、国も含めると20兆円規模の歳出削減が可能となると私たちは主張します。
○・・・  そこで、お伺いしたいんですけども、1点目の、14兆円のところでお伺いします。14兆円というのは、何が削られて14兆円浮くのでしょうか。
○・・・  はい。そちらについてなんですけども、別途、こちらで書籍ありますので、また、そちらを購入になっていただければと思います。
○・・・  なるほどですね。わかりました。では、メリット2の方に移らせていただきます。地域に即した行政ということだったんですけども、これは、道州制にしないと解決しない問題があるということなんでしょうか。
○・・・  そうですね。道州制に移行することによって、より住民のニーズに即した行政サービスが行えると・・・。
○・・・  今よりも即した行政サービスが行われるということですね。
○・・・  そうですね。今よりも即した行政サービスですね。
○・・・  では、最後に一つ、お伺いします。メリットの2点目。地域に即した行政。何が重要なんですか。
○・・・  地域に即した行政サービスを行うことにより、より住民の声を反映された行政サービスが現在よりももっとより住民の生活に即して、住民のためになるような、行政サービスが行えるようになります。
○・・・  住民のための行政というものが大事なんですね。ありがとうございます。

○・・・  

否定側第1立論。時間は6分間です。
○・・・  では、始めます。まずは、肯定側の・・・を御覧下さい。まず、1点、反論していきたいと思います。メリットの1点目。日本の借金が減るという ことをおっしゃってたんですけども、ここに対して、歳出が減るということに対して、資料をいただきました。これに関して1点。アの公務員のリストラが起こ ります。リンケージ。行政機関が小さくなります。2008年3月18日、日本経団連。道州制導入に向けた第2次提言。引用開始。「 (社)日本経済団体連合会地方公共団体において、事務事業の合理化を進めれば、国から転籍した職員および地方公共団体職員のうち3万4千人弱は定員削減が 可能であり、 労働市場を通じて民間企業に活躍の場を求めることになる」。つまり、これはあくまでも一例なんですけども、こういうふうに公務員のリストラが起こることに よってコストのカットが起こるということを忘れないでください。
 では、次に行きます。メリットの2点目。地域に即した行政ということでしたけれども、実際に、道州制が行われることによって、権利が委譲されるというこ とを言われてましたけども、これは、以下のように2点の理由によって成り立ちません。1.道・州の能力不足。「地方には人材が不足しているので、道州制を とっても上手くいかない。」元佐賀市長、木下、2011年。引用開始。「道州制にしても地方主権にしても、実現したら地方は豊かになるのでしょうか。私 は、よく全国各地を訪れて講演をしていますが、地方の住民(非公務員)に、「地方自治体に政府の権限を任せて、自分たちでなんでも決められるようにした方 がよいですか?」と、尋ねています。すると、答えは意外なほど「イエス」と「ノー」に分かれます。地方では、地方分権推進一色ではないのです。「ノー」と 答える理由は簡単です。地方公務員や地方議会を間近に見ているだけに、「彼らに任せて本当に大丈夫か」と思う人がかなりいるのです。確かに、地方公務員制 度や地方議会が今のままであれば、地方主権を実現しても「ミニ霞が関」をつくるだけに終わり、新たな経済政策や効率的な行政の実現は難しいと思います。」 以上、終わりです。
 2点目。道州政治の官僚化。「道州に自治能力が無いために、国に依存したり、タテ割りによって、官僚化してしまう可能性が大きいです。」中央大学教授、 磯崎、2011年。引用開始。「また、道州が自ら国に依存したり、官僚的な組織になるという心配もある。道州が移譲された権限を十分に担えないために国に 指導助言を求めたり、道州組織の規模が拡大して縦割り化が進むとともに、内向きの発想になって住民の期待やニーズに柔軟に対応できなくなるという可能性は 否定出来ない。現在でも、東京都等の大規模自治体にはこうした傾向がある。」引用終了。
 このように、縦割り、政治の官僚化や、能力不足によって、うまくこのメリットは起きません。
 続いて、・・・の議論に移ります。デメリット1点目。市町村合併。・・・。現状では、いわゆる平成の大合併は収束し、今後の市町村合併は少なくなります。
 B、発生過程。プランを取ることにより、道州制がさらなる市町村合併の口実となり、再び市町村合併が進められてしまいます。岡田、2010年。引用開 始。「さらに、道州制導入によって危惧されるのは、さらなる「市町村合併」が推進される可能性が大きいことである。[中略]道州政府という大くくりの広域 自治体ができると、基礎自治体の「行政能力を高める」という考え方から、人口30万人を最終目標に、それに向けた一層の市町村合併が必要となる。」
 肯定側のプランによれば、そのまま市町村を導入するということでしたけれども、それでは道州の政治が立ち行かなくなる。つまり、そのプランを導入したあとに、どんどんどんどん市町村合併が進んでいくという資料です。
 重要性です。市町村合併は、住民サービスの低下、自治の低下につながります。全国町村会、2008年。引用開始。「合併した市町村で見られた財政支出の 削減効果は住民サービスの低下を伴うもの。また、行政と住民相互の連帯の弱まり、財政計画との乖離、周辺部の衰退など、さまざまな弊害が顕在化。」終わ り。
 このように、・・・。
 続いて2点目。「租税競争」。・・・性。現状では、企業誘致などに関しても、一定の制限がかかっており、ある地域が極端な減税政策を行う、といったことは防がれています。
 発生過程。プランを取ることにより、道・州は企業誘致に力を入れようとするため、租税競争を招きます。道州制ビジョン懇談会、長谷川、2008年。引用 開始。「道州に全部自由な税率、自由な税目で設計するようになると、これは僕は間違いなく減税競争が起きると思うんです。[中略]なぜなら道州法人税が低 いところに法人が投資するようになるから、今既に世界で起きていることですから、税の安いところが善政だということになって減税競争が起きる。」終わり。
 インパクト。租税競争により、かえって社会全体で税収が低下してしまいます。広島大学教授、伊藤、2009年。引用開始。「租税競争とは、たとえば、あ る地方政府が企業誘致をするために税率を引き下げると、ほかの地方政府も追随して引き下げ競争に入ることである。[中略]相互に税率引き下げを競争してい くことで過小税率となり、最終的には社会全体の税収低下をもたらしかねない。」引用終了。
 以上で、第1立論を終わります。ありがとうございます。

○・・・  すいません。道州政治の官僚化についてのエビデンスをいただいても・・・。

○・・・  肯定側、準備時間です。

肯定側質疑。時間は3分間です。
○・・・  はい。では、肯定側質疑を始めます。まず、メリット2点目の反駁で、道・州の能力不足によって道・州への権利委譲というのは困難ではないかというふうに話されていたと思うんですけども、佐賀県知事ですかね。
○・・・  ここで私たちが言いたかったのは、権利委譲はプランする以上、できるはずなんですね。ただし、それを運営する能力があるかというところが。
○・・・  ありがとうございます。知事から、市役所職員。
○・・・  市長さんが、一般の非公務員の方に聞いた。
○・・・  一般の非公務員の方、数名に聞いて、それをもとに議論を展開されている・・・と思うんですけども。
○・・・  議論が展開されてるというか、根拠に主張が述べられているというか、そういうところですかね。
○・・・  エビデンスとして一応、根拠は明確ですかね。・・・とは思えないんですけど。
○・・・  信頼がないというところがまず、第1にあったことと、まず、さらにもう一つ、・・・のが、官僚化の・・・ですね。
○・・・  ありがとうございます。でですね。現状の地方議員や地方公務員。・・・という環境だったら、道州制は難しいということだったんですけど、道州 制に、僕たちのプランでは、移行することによって、今、国で働いている省庁での職員であったり、優秀な国会議員の方が、地方に移っていかれるというふうな ことも想定してるんですけど、それによって環境って変わりますよね。
○・・・  そこで、単純に考えられることは、その幾つかの道・州に分かれることによって、その力が分散されるというふうに考えられると思います。
○・・・  分散されますかね。ありがとうございます。
 続いてなんですけれども、道・州の政治の官僚化というふうにお話されていたと思うんですけれども、十分に権限を道・州は担えないのではないかというふうにお話されていて。東京都もそうした傾向にあると。具体的にどういう傾向が起こってるんですかね。
○・・・  ここで言っていることは、まず、権限を行使できない状態になってしまって、国に結局、指導、助言を求める。そこから、道・州組織の。
○・・・  はい。わかります。実際に、具体的に、東京都は国に対してどういうふうな助言を求めましたか。
○・・・  ここではそこまでは・・・。
○・・・  ありがとうございます。具体ではないんですね。はい、ありがとうございます。質疑は以上です。

○・・・  

肯定側第2立論、時間は6分間です。
○・・・  それでは第2立論を始めさせていただきます。まず、否定側第1立論で、こちらに対する反駁があったんですが、それに対する反駁をしていきたいと思います。
 まず、第1立論。プライマリーバランス。・・・メリットのところに関してなんですが、公務員のリストラというのが出てましたが、否定側も、歳出が減ると いうことは認めています。その上で、公務員のリストラというのは、あくまで一例であって、その他、二重行政などの削減によっても歳出が減るということで す。歳出が減るということは、否定側も認められています。
 そしてまた、次、メリット2の方の、道・州の人材不足。エビデンスとして数人に聞いた程度のエビデンスでは、あくまで個人的な感想であり、エビデンスとして不適だと思います。よって、エビデンスがないものと考えます。
 また、下の方も、官僚化に関しても、具体例がなかったので、これもエビデンスとして、具体例がなく、ただただ国に指導を求めているということを主張されていただけなので、エビデンスとして不適と考えます。
 肯定側第1立論に移ります。肯定側第1立論に対する反駁なんですが。その前に、プライマリーバランスを説明をしておきたいと思います。プライマリーバラ ンスというのは、国の税収のうち、そこから国債と国債の返還する金額を除いたものということで、つまり、税収のうちで借金がないものが、借金を除いた額と いうのが、それがゼロだったときは、プライマリーバランスがゼロで、借金がない状態でも、プラスの黒字の場合が、プライマリーバランスとなります、という ことです。現在は、それがマイナス30兆円規模ということで、非常に悪い状態です。
 反駁に移っていきたいのですが。住民サービスの低下と言われていましたが、こちらは、肯定側第1立論のメリット2の方で、地域に即したサービスが行われるということで、住民サービスの低下は起こらないと考えます。
 そして、租税競争が起こるということですが、こちらのプランとしては、税率を変更する権利というのは与えるわけではなく、徴税権、つまり、税を徴収する 権利を道・州に与えるというだけなので、税率を変更することがないので、租税競争ということは起こりません。こちらのプランとしては、税を徴収するには、 法律に基づかないといけないのですが、その立法権というのは未だ、国にあるままなので、その道・州が勝手に税率を変更するというようなことは、起こらず、 租税競争というのは、起こりません。というわけで、否定側のデメリットは発生しないものと考えます。
 こちらの肯定側第1立論を補強するエビデンスなんですが、まず、地域発展に関してです。地域の発展。地域の発達。内閣官房ホームページ。道州制ビジョン 懇談会中間報告書より。「地域主導型道州制の下では、各道州がそれぞれの地域で潜在能力が発達し、比較優位を自ら創造し、工夫と責任で、発揮することがで きる。また地域住民も、自らの意思と意見で満足感の大きい生活の実現に自主的に取り組むことができる。」このように、道・州に権限を移し、地域の特色を出 した経済政策などを行うことに、地域を活性化します。
 その場合の試算というのをまた、エビデンスとして引用します。九州の社会資本配分効率化による結果。林宜嗣、21世紀政策研究所、「地域再生戦略と道州 制」。2009年より引用開始。「社会資本の総額を変えることなくいきなりその生産額が最大になるように九州各県において産業間の社会資本の配分を変更、 生産性の低い第1次産業から生産性の高い、非第1次産業に変更することによって、九州全体で2,756億円の域内総生産をふやすことが可能となる。また、 域内総生産額を現状のままにし、配分を変更することによって、公共投資額を九州全体で6,218億円削減することができる。」という結果が得られた。
 このように、九州だけでもこれほどの大きな効果が得られるのであり、道州制というのは、全国で行われることです。全国にこの効果が広がる、全国でこれが行われるとすると、非常に大きな効果をあげられると考えられます。
 以上で、第2立論を終わります。

○・・・  よろしいでしょうか。

否定側質疑。時間は3分間です。
○・・・  はい。では、始めます。まず、肯定側の議論についてお伺いしていきたいんですけども。今回、おっしゃってるのは、道州制を導入することで、メ リット1、プライマリーバランスの正常化。2、地域に即した行政が行われる。さらに、その中で幾つか経済効果があるようにおっしゃっていたんですけれど も、我々がここで見る限りは、先ほど、反論でもあった点なんですけど、14兆円歳出が減るという件。そこに関して、公務員は一例であって、これは二重行政 を解消することによって、とおっしゃいました。
○・・・  「など」です。二重行政など様々。
○・・・  では、二重行政の部分では、人が削減されてると思ってよろしいですね。
○・・・  二重行政の部分で人が削減されるという。
○・・・  機関が二つあって、同じことをやってるのが問題であって、その機関を一つ、廃止するってこと・・・。人が雇えなくなるんですね。
○・・・  そうです。
○・・・  はい。ありがとうございます。では、次に、メリット2の・・・、地域住民の声に即した行政という点と、九州の域内総生産をあげるという・・・2枚連続で。後者の点なんですけど、これは、道州制を導入することで起こるメリットなんですか。
○・・・  道州制を導入して、九州なら九州という州をつくったとして、その九州が独自の経済政策を打ち出して、社会資本の配分を効率化するということによって起こるということです。
○・・・  では、それはプランを導入して道州制にします。道州政府がそういうふうな社会資本の投資体系を変えます。それから起こるメリットということですか。
○・・・  道州制を導入しないと、現在の九州というのは、県がバラバラになっているので、・・・できないんです。
○・・・  そこはどこで立証されましたか。道州制じゃないと、それの域内総生産を上げることはできないというのはどこで立証・・・ですか。
○・・・  道州制でないと、と言うより、道州制なら効果が上がるということなんです。資料は、先程もあげた、林宜嗣氏の地域経済によって財政の再生と・・・。
○・・・  いいです。後でお借りします。メリットの1点目について、ちょっと戻るんですけども、これは、結局、どのぐらいの程度の時間をかけてこういうふうに戻していくつもりなんでしょうか。
○・・・  どの程度。戻すというのは。
○・・・  正常化する。正常に戻すんですよね。
○・・・  それに関しては詳しい試算はやってないです。
○・・・  ありがとうございます。

○・・・  否定側、準備時間です。

否定側第2立論、時間は6分間です。始めてください。
○・・・  はい。ありがとうございます。まず、肯定側のフローを御覧下さい。メリット1点目、プライマリーバランスの適正化のところについて、説明しま す。こちらの方がターンアラウンドで、公務員のリストラの話をしましたところ、歳入が減るのは、もちろんリストラもそうなんですけど、・・・、二重行政が 削減することで歳出が減るんですよということが、共通の話なんですけども、先ほど、確認しましたけれども、二重行政が減るということは、かぶっているとこ ろを減らすので、減らした分の人は、確実にリストラと言うか、機関をなくすので、そこによるリストラは発生し得ます。なので、こちらの言っている、一部か もしれませんけど、のような、導入することで、すぐに起きるデメリットというのは、一つあります。
 次に、それに対してなんですけども、プライマリーバランスが、何回も確認したんですけども、どれくらいかけて、どのように、何がいいのかという具体的な ビジョンを肯定側さんは示されていません。それに対して、リストラが起きてしまえば、明日、御飯、どうしようか。そういう身近な直近の問題にもかかわるわ けですよね。わかりやすく、すぐに明日にでも生活にかかわることなので、その点、確認してください。
 次に、メリット2にいきます。メリット2なんですけども。すいません。否定側の理論にいってください。否定側の理論。先ほど、税収の租税競争の話で、地 方に、道・州には立法権がないので、結局、税率が変わりませんよという話があったんですが、その点に関して、地方に立法権がないということは、実質、ほぼ 今のような都道府県制のようなシステムの中で、道州制を行うということで、ということは、地方は新たに何か、自由度が広がるということはなくて、結局、 じゃあ、このメリット2はどうやって発生するんですかという話で、地域に即した行政サービスを行っていくためには、自由度があるからこそ、地域に即した行 政サービスを行っていけるわけで、ですから、肯定側さんは、こちらのデメリット1の、市町村合併のインパクトですね。市町村合併が起こることによって住民 サービスが低下するんですよという話は、メリット2で、地域に即した行政サービスが行えるから当たってませんというふうにおっしゃいましたけど、立法権が なくて、今の現行の都道府県制と何ら変わりがないということは、・・・メリット2でおっしゃるような今の地域に即したサービスが行えるかというところまで は立証されてません。確認してください。
 こちら、そうですね。なので、肯定側の第2立論でおっしゃった、デメリットとしての反駁は当たっていません。
 すいません。肯定側の議論にもう1回、戻ってください。メリット2点目に関して、こちら側から地方の能力不足であるとか、道・州の官僚化という話の反駁 をしたんですけども、確かに、1点目の資料、地方の能力不足に関しては、これは、一般の人に聞いただけということかもしれないんですけど、実際に住民の目 にそう映っているということは、結局、ニーズを反映してほしいのは住民なんですから、それを任せられるのかっていうところ。だから結局、住民がそう判断す るということは、官僚というか、行政をしていく方々が、本当に住民のニーズをわかっているのかなということは、仮にメリット2の地域に即した行政サービス が道州制を導入することによって行われるとしても、ちゃんと即したサービスを行ってくれるかどうかは、わかりません。なので、これも減じられると思いま す。
 第1立論のときの質疑の伺いましたが、このメリット2の何が大事なんですかと伺った時に、今よりも住民のための行政が行えるということをおっしゃってい ました。これも先程から説明してきているように、現状の都道府県制からどれくらい自由度があるのかがよくわかりませんので、今よりもどれぐらい住民のため に、よいサービスができるのかというところまでは立証されてないと思います。ですが、こちらのデメリットの市町村合併によるデメリットは発生します。なの で、ここは正してください。
 ありがとうございます。

○・・・  

肯定側質疑。時間は3分間です。
○・・・  では、よろしくお願いします。まず、否定側の租税競争のところ。デメリット2のところ。立法権がないから都道府県制度と変わらない。自由度がないと言われていますが、その自由度というのは、そもそも何でしょうか。
○・・・  立法権があると、それぞれで決めれるわけですよね。それが、今は、国から・・・。
○・・・  条例でも決められますが。
○・・・  それは・・・。
○・・・  そうです。
○・・・  はい。ただ、条例でも決めれますし、政策に関しては、立法に基づかなくても行えます。どうでしょう。
○・・・  でも、法律で決めないとできないこともあるのではないでしょうか。
○・・・  その・・・。もういいです。それではほかに行きます。市町村合併によって行政のサービスが低下するということでしたが、メカニズムをもう一度、詳しく説明していただいてよろしいですか。
○・・・  はい。わかりました。デメリット1点目で説明したかったのは、今、道州制が、今の現状では、国があって、都道府県があって、その下に基礎の団 体として市町村がありますが、それが道州制によって、行政を行う行政単位が、都道府県幾つかが集まった道・州の州になると、住民からすると、今のままの市 町村の大きさでは、上部組織である道・州に対応し切れない。
○・・・  なぜ、対応し切れないんですか。
○・・・  というのを、資料では。もう1回、じゃあ、言いますね。・・・。「道州制導入によって危惧されるのは、さらなる市町村合併が推進される可能性 が大きいということである。(中略)。道州政府という大くくりの地方自治体ができると、その自治体の行政能力を高めるという考え方が、人口30万人を最終 目標に、それに向けた・・・市町村の合併が必要となる。」
○・・・  必要となるんですか。なるんですか。
○・・・  だから、住民が。
○・・・  今のままの基礎自治体で、上に対して意見を言って、それを反映してもらうということは、不可能なんでしょうか。
○・・・  サイズ的に。
○・・・  サイズ的に。
○・・・  はい。今の市町村のサイズから都道府県のサイズというのと、今の市町村のサイズから道・州幾つかが集まったというサイズでは。
○・・・  それは、都道府県から国のサイズというのと大して。都道府県から国に上げるというのもサイズが小さくないですか。都道府県では。市町村で小さいというのなら。・・・はい、もういいです。住民のニーズ。
○・・・  はい。ありがとうございます。

○・・・  否定側準備時間です。
○・・・  ・・・すいません。市町村合併の資料というのは今、請求できるんですか。
○・・・  うちの順番。
○・・・  わかってる。

○・・・  

否定側第1反駁。時間は4分間です。
○・・・  では、始めていきます。否定側第1反駁です。今、何が議論されてるのか、1回、ちょっと整理してみませんか。ということで、まず、肯定側から 言われてることは、日本の借金が減ることがいいことだよ。道州制だとそれができるよ。2点目。道州制にすることで、地域のニーズに合わせた政治が行われる よ。それがいいことなんじゃないの。というところまでわかってるんですよ。
 ちょっと議論になってるところなんですけど、プランで立法権がないというところ、条例の話とか、絡んで話が・・・ですけども、現状は、都道府県が何を やってるかと言うと、国が定めた法律の下で、条例を定めて行政を行ってるわけですね。それって、道州制を導入して、国が立法権を持ったまま、道・州がある 程度の政治、お金を持って政治が行われるということと、何が変わるんでしょうか。まず、その仕組みが変わらないということは、その自由度が低いという現状 は、アフタープランの世界でも変わらないということですね。
 それに関しては、肯定側から何の権利が一体、委譲して、何の権利が委譲されないのか、このあと、説明をお願いします。でない限り、地域に即した行政というものが行われないことになります。現状と同じなんですから。
 さらに、メリットの1点目。プライマリーバランスの正常化。お金が徐々に徐々に返せていけるかもしれないっていうのは、何となくわかったんですけども、 でも、忘れちゃいけないのは、明日の生活が困る人が出てくるということなんです。政策によって。それは、先ほどの第2立論でずっと申し上げてることなんで すけども。それだけは忘れないでください。
 日本の借金を本当に、この862兆円というお金が、どんどんどんどん膨れ上がって、本当にもさっていってしまうのか。それとも、何万人という人が首にな る。そしたら家族まで影響が来るわけですね。3万人だけじゃないんですよ。ということは、それだけの国民が被害を受ける。国の政策によって被害を受けると いうことが起こるということは忘れないで。
 デメリットの方にいくんですけども、市町村合併ということなんですけども、これがどういうことかと言うと、結局、都道府県がなくなっちゃう。ここの肯定 側さんのプランから考えると、ある程度、国に権利が残った上で、県よりも大きい道・州というのができるんだよ。ということは、県と市町村の対応というの は、多過ぎると難しいから、だから市町村が大きくならないと、それに合わせてサイズが大きくならないといけない。それがどういうことを引き起こすかと言う と、今、市町村というのは、割と、身近なところに役場があるはずなんです。若干、平成大合併によって遠くなったというところがあるんです。ただでさえ、そ れだけ遠くなって困ってる人がいるのに、これから道州制を導入して、さらに、もっと大きな市町村にしちゃうよ。そしたら、もっと困るじゃないですか。
 結局、そういったサービスが行き届かない。そんな道州制を導入することは、必要なのか。それをこのあと、議論をさらにしていきたいと思います。
 ありがとうございます。

○・・・  肯定側準備時間。残り4分42秒からです。
○・・・  すみません。先ほどの市町村合併についての資料をいただいてもいいですか。

○・・・  

肯定側第1反駁、時間は4分間です。
○・・・  では、反駁を始めたいと思います。まず、プランに関連することから説明したいと思います。先ほど、否定側も述べていたとおり、道州にどういう権限が委譲されるかわからないというところだったと思うんですね。ここについて、まず最初に説明したいと思います。
 これは、簡単に言ってしまうと、中央省庁から地方に、地方が、道・州が持つべき権限を委譲する。そういう役割分担をすべきだというふうに思います。ここで資料を引用します。
 西尾勝、2007。「地方分権改革」より引用します。「国庫補助負担金をこれに付随する補助要綱、補助要領などをできる限り廃止するとともに、これが・・・大枠化し、細目のルールメーキングを道州または市区町村の条例に委ねることである。」引用終了します。
 このような形で、道・州に、道・州が持つべき権限を委譲する。こういう形で、道州制を運用していく形になります。
 続いて、メリット1の方に移りたいと思います。プライマリーバランスのところですね。否定側は、明日の生活に困る人が出てくるというふうにお話されたと 思うんです。ただ、このプライマリーバランス、これを解消しないことには、日本全国の国民が、明日の生活が困ってしまうというふうになります。どういうこ とか、説明します。
 現在、プライマリーバランスが解消されない。マイナス30兆円ということで、どんどん国債残高が溜まっていく。そうだと、どうすべきか。国は、国債を海 外の人にも買ってもらわないといけない。ということになると、海外、肯定側の立論のときにも少し触れたんですけども、国債の海外保有比率がどんどん高まっ ていきます。これは、ギリシャがデフォルトしたときもそうだったんですけど、海外保有比率が高まったため、最終的に国債を返済することができなくなった。 デフォルトになってしまったというふうなロジックなんですけど、これが、日本でも起こってしまうんです。それを解消するために、プライマリーバランスをで きるだけゼロに近づける。そして、日本がデフォルトしないようにするための政策として、道州制を導入したい。そのように考えています。
 なので、明日の生活が困る一部の人よりも、日本全国の人が困らないために、道州制を導入しなければならない。このように考えます。
 では、続いてメリット2点目のところに進みたいと思います。道・州が権限を委譲されても、それを担える能力がないんじゃないかというふうに話していて、 否定側第2立論で、数人の意見を聞いたものではないか。確かにそうだというふうにおっしゃっていて、その点は認めていました。そして、ちゃんとしたサービ スを道・州が行うかどうか不明というふうにお話されていたんですけど、まず、1点目。道・州はその権限を担えるほどの人材も確保できる。国から優秀な官僚 の人、また、国会議員の人が、道州議員になってもらって、しっかり道・州の権限を担ってもらう。そして、住民のサービスがしっかり行えるかどうかというふ うに、なんですけど、これは、立論でも述べていました。さらに、また、再び、言わせていただきます。
 自治体は、様々な問題に対して、対処、管理する必要があるんですが、その都度、国の対策、方針を仰いでいては、非常に効率が悪く、対応が遅れてしまう。 そのため、しっかり、道・州に権限を委譲して、道・州がその場で、近くで起こった問題を解決するというふうにしていくというふうに思います。

○・・・  否定側準備時間。残り2分55秒からです。

否定側第2反駁。時間は4分間です。
○・・・  はい。始めます。否定側第2反駁です。まず、肯定側の議論から見ていきます。お願いします。
 プライマリーバランスのメリット1点目。プライマリーバランスの可能性についてずっと議論が・・・てるんですけれども、もう一度、確認します。先ほど、 否定側さんは、この道州制の導入の仕方について、国というものはとりあえず残って、その下に。・・・の条例に委ねる・・・を道・州に任せるという話をして いて、ということは、そもそもプライマリーバランスの適正化ということをおっしゃってるんですけども、これは、道州制を導入することで、国と地方の二重行 政をまず減らせるから、それによって歳出が減る。ということは、借金がなくなるという話みたいなんですけども、そもそも先ほどおっしゃったように、国とい う形が残っていて、国の下に道・州があって、それが市町村へっていくんだったら、二重行政がなくなるのかという話も、怪しくなってきますよね。ということ は、国に、優秀な人材が行くから、国からも優秀な人材が地方へ流れるとおっしゃったんですけども、そのうち優秀な人材が本当に地方に来てくれるのかという ところも怪しくなりますよね。
 仮に、二重行政がなくなったとして、二重行政がなくなるということは、なくなった分は確実に、その人々は人員削減されるわけですから、私たちが言うよう に、明日の生活が、首を切られてしまったら、明日の生活をどうしようと思う人が生まれますよね。それに対して、プライマリーバランスがどれくらい、どのよ うに、どのくらいの年月をかけて正常化されていくのか、具体的なビジョンが見えてきません。ということは、逆に考えると、どのくらいの期間をかければ、こ のままでは国が破綻してしまうかもしれない。そしたら、日本全体にかかわるんだとおっしゃったんですけど、このプランを導入することで、どのようによく なっていくかということもわからないし、逆に言ったら、どれくらいかけて本当に国が破綻するかもわかりませんよね。100年かもしれないし、1,000万 年かもしれないし。ただ、明日の生活が困る人を生むのに、そんな、もしかしたらすごい先かもしれない議論をするのは、むしろデメリットです。
 否定側の議論に移ってほしいんですけども、私たちが言ってるように、道州制を導入するということで、今は、国、都道府県、市町村という行政単位があると 思うんですけど、それが市町村合併が県単位、県レベルの大きさではなくて、それを県が幾つか集まったレベルの大きさになってしまうんですね。だから、今の 地方のサイズに対して都道府県だからうまいこといってるけれども、今の地方のサイズで、その上の組織が都道府県ほど大きくなってしまったら、それに地方が 対応できないということを言って、だから市町村合併が起きたんですよという話をしていました。
 ですから、その点を確認してください。
 というわけで、否定側と肯定側と比べたいんですけども、このプランを導入することによって、どんなビジョンが、どれぐらいよくなるというビジョンが明確 に示されていない肯定側に対し、否定側は実際に、明日へもしれない人が生まれてしまうんですよという話とか、市町村合併で、サービスが低下してしまうんで すよという話をしているので、・・・確認してください。
 ありがとうございました。

○・・・  肯定側準備時間、残り3分4秒からスタートです。

肯定側第2反駁。時間は4分間です。
○・・・  はい。では、今から肯定側第2反駁を始めさせていただきます。まず1番の論点になっているところを御確認ください。こちら、メリット1のプラ イマリーバランスの適正化についてですね。今、双方の議論が白熱しています。こちら、最後にまとめて詳しくしゃべりたいので、先に置いておいて次に行きま す。
 まず、メリットの2についてですね。こちら、再三、権利委譲などはしっかり行うことができると。権利委譲をしっかり行うことができると何がいいんだと。 すると、地方に対する行政サービスの効率化を図ることができると。向こうは人材確保ができないだったりとか、あとは、市町村合併によってその弊害が起こる とおっしゃってました。人材確保がもしできないという議論に関してなんですけども、こちらはすごく向こう側、議論の証明が不十分じゃないかと考えておりま す。
 それに反対しまして、例えば、私たち、それ、ちょっとメリット1の部分とかぶってしまうんですけど、じゃあ仮にリストラが3万4,000人の公務員が出 てしまったと。では、地方に移ればいいだけの話じゃないですかと。その間、当然、優秀な人も、もしかしたら二重行政のカットによって切られる人もいるかも しれないですけど、その人が全部、地方に移すだけでもオッケーですし。
 また仮に、市町村合併で地方が対応できないとなりましても、じゃあ、道・州から今度は、出先機関を設けて、その道・州の出先機関によって対応すればいいじゃないかという議論になります。
 議論としましては、メリット2については、ちなみに、佐賀のエビデンスに関しては、こちらが証明力不十分ということに関して、向こうからの反駁が最後、 なかったので、こちらをとっていただくと。結果、メリット2の議論に関しましては、肯定側の議論が残るのではないかと考えています。
 次に、向こう側のデメリット1についてですね。市町村合併についてなんですけど、市町村の役場が遠くになるという話だったんですけど、それもさっきの出先機関で対応できるんではないかと思っております。
 住民サービスの質についてなんですけど、否定側は低下と。肯定側は向上というふうに言ってるので、ここはしっかり肯定側の議論をおさえていただければと思います。
 あと、デメリット2について、租税競争についてなんですけども、こちらの反駁に対して再反駁がなかったので、租税競争はまず、立法が移さないということも考えまして、・・・起こらないというふうに考えてください。
 はい。では最後、目玉のメリット1ですね。プライマリーバランスの適正化の方にいきます。まず、プライマリーバランスの適正化についてなんですけど、仮 に、二重行政についてはしっかりカットすることによって効率化を図ることができると。また財源も残すことができると。じゃあ、プライマリーバランス、結 局、何が進むのという話ですね。そのような二重行政をカットするということによって、プライマリーバランスが歳出をまず、14兆円。そして20兆円とい う、こちらのエビデンスがありました。こちらによっても、歳出を減らすことができるということは、しっかり残っていると・・・いただければと思います。
 肝心の、向こうが主張するように、例えば、明日のご飯が食べられないような公務員がいると。そうですね。公務員が出るかもしれないですね。公務員が出た ところで、その人たちはすぐ、そのまま、明日すぐ、飯が食えなくなるかというのは、ちょっと疑問じゃないですか。向こうは、明日というふうに、ちょっと私 たちの議論と比較して、こちらはビジョンが立ってないと。何万年先になるかもわからないというふうにおっしゃって、ちょっと強調をしてるんですね。明日と 何万年という比較を。
 でも、よく考えてみてください。ギリシャの人々。本当に、明日、すぐ、飯が食えなくなるとか思ってたわけでもないし、何万年後にプライマリーバランス、 どうせ大丈夫だとか思ってたと考えられますか。ギリシャの人は、本当にそうやって思ってて、日々、行動していると思いますか。思わないですよね。その結 果、デフォルトが崩壊したという現状を見る。このギリシャがデフォルト崩壊したという例をしっかり認識してください。日本でもいつか、必ず、このままでは 起こり得ることなんです。そのときに、では、日本国民の失業率がバーンと跳ね上がります。3万3,000人どころでは、足りないぐらい。公務員とか、また ほかの人々で削減されてしまったときの比較ですね。日本国民と、先ほどの明日、飯が食えなくなる3万3,000人。どっちの方が重要かは、明らかだと思い ます。
 以上です。

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チーフジャッジ講評(JDA九州支部副支部長・九州大学法学研究院准教授 蓮見二郎)

○・・・  皆さん、どうもお疲れさまでした。特に、最後、決勝戦まで出て、ディベートをされた皆さん、本当によく頑張っていらっしゃったと思います。
 簡単に、5点ほど、気づいたことをお話したいと思います。僕は、九州法学部で政治学を担当しているんですけども、道州制について余り、政治学的な話をし ようというんではなくて、きょう、ディベート、特に決勝戦のディベートを聞いて少し、気づいた点、もう少し、こうするといいんじゃないかというふうに気づ いたところを皆さんに、アドバイスしていけたらいいと思います。
 まず、一つ目は、反論の仕方なんですけども、反論するときに、どうやって相手のメリット、デメリットを潰すのか。すごくこれ、重要なことだと思うんで す。今回の決勝戦の試合で、否定側から、特に、メリットの一つ目、プライマリーバランスの議論に対して、ターンアラウンドになってるんですね。ターンアラ ウンドというのは、皆さんも御存じかもしれませんけど、相手がメリットだといった議論に対して、いや、それはむしろメリットじゃなくて、デメリットがそこ からも出るんだよという、反転する。相手の議論を逆手にとるような議論になってくる。
 こういう議論があると、強くなってくると思うんですね。例えば、どんなに相手のメリットがない、メリットがないということをいろいろ言ったとしても、本 当にじゃあ、相手のメリットがゼロになるのかと言うと、なかなかゼロにするというのは難しいですね。あるいは、デメリットでもそうですね。相手のデメリッ トは発生しないとか、重要じゃないと言っても、全く発生しないこととか、全く重要じゃないことを言うってことはほとんどないわけですね。やっぱりちょっと は発生しちゃうかもしれない。
 ちょっと、やっぱり重要かもしれない。ということは、どうしても残ってしまう。そうすると、どんなに頑張っても、完全にゼロにはできない。じゃあ、どう するのかと言うと、そういうときに、ターンアラウンド。相手の議論を反転させる。逆手にとって、それでゼロにならないものを、相手を上回る形で反論してい く。相手のメリットに対して、いや、デメリットの方が大きいんだということで、上回っているという反論をしていくということができると非常に効果的だと思 うんです。
 そういう意味でも、ターンアラウンドを使っていたというのは非常によかったんじゃないかなと思います。
 二つ目ですけども、二つ目は、決勝戦、両方のチームとも、特に、最後の方の反駁の方に入ってきたときに、きちんとメリット、デメリット、両方を押さえ て、両方あるというのを前提とした上で、比較してたと思うんです。例えば、プライマリーバランスの議論のところでも、公務員のリストラが起きるんじゃない か。3万3,000人、4,000人という公務員がリストラされてしまうかもしれないという議論と、あるいは、ギリシャのように、日本の財政がデフォルト が起きてしまうかもしれない。その二つのメリット、デメリット両方が残ってたなと。これを両方について比較してたわけです。明日すぐにでも起こることの方 が問題なのか。それとも、もしかしたらちょっと先かもしれないけども、でも、ギリシャのように、明日起こると思っていなかったことが突然、起こる。そちら の方がより深刻なのか。どちらが深刻なのかというのを肯定側、否定側、両方とも比較してたと思う。こういった、最後に残ったインパクトを比較していくとい うのが、非常に重要なことで、今回の決勝戦では両方のチームがそういうことをきちんとやっていたと。非常によかったんじゃないかなと思います。
 三つ目は、今の点にも少し関係してくるんですけども、重要性とか深刻性についての議論ですね。ディベートの試合で、現状はこうなってます。それがこのプ ランをとると、こうなります。こういうメリット、デメリットが起きます。そういったことについては、非常に、よく、皆さん、エビデンスを使ってきちんと説 明することが多いと思うんですね。でも、時々、深刻性についてきちんと説明するってのがおろそかになってしまうことがあるんですね。例えば、どうして、ギ リシャのようにデフォルトすると困るんですか。ギリシャのように日本がデフォルトしてしまうかもしれませんって、言われてましたけども、どうしてじゃあ、 デフォルトすると困るんですか。どうしてデフォルトというのは悪いことなんですか。と言うと、何か、デフォルトと言われると、何となく悪いんじゃないかな という、漠然としたイメージが伝わってくるんですけども、何が悪いのかというのは、なかなか明確にはそれだけでは伝わってこない。
 それに対して、最後でやっとですけども、肯定側からも、3万何千人とかっていうレベルじゃなくて、国民みんなが失業して困ってしまうかもしれませんとい うような話をしてるんですね。そうすると、失業という同じ肯定側、否定側、インパクト、悪いことが起きるわけですけども、公務員だけ3万何千人失業するの か、それとも、ギリシャのように国民みんなが失業して困ってしまう。そういった比較もできる。できるだけ、具体的なイメージを聞いている人が思い浮かべら れるようなレベルまで落として説明する。そうするとこの深刻性、重要性というのが非常に効果的に聞いている人に伝わると思う。そういう点では、否定側の人 は、公務員のリストラが何で悪いのか。明日、御飯が食べられなくなるかもしれない。非常に、何ていうか、目に映像が思い浮かぶような、具体的な説明でし た。そういった具体的に、どうして悪いのか。それは非常に悪いことだ。問題だって感じるレベルまで落として説明すると、説得力が高まってくるんじゃないか なと思います。
 それと4点目ですけども四つ目は、質疑応答のところについて。質疑応答も、今回の決勝では、特に非常にうまく質問してたり、答えたりしてたと思うんです けども、まず一つ、よかった点からお話すると、よかった点は、質疑応答で相手に対して聞いたところ、そこで引き出した答えをそのあとのスピーチできちんと 使って議論してるところがあるんですね。例えば、佐賀の市長が言ったという証拠資料がありましたけども、それについて、何人に聞いたんですか。数人にしか 聞いてないんじゃないんですかということを引き出した上で、次のスピーチで、単に数人に聞いただけのエビデンスなので、エビデンスとして効果ありませんと いう反論をしていました。
 そうやって、質疑応答で、相手の証拠資料、議論について明らかに、それを踏まえた上で、次のスピーチで反論につなげるという非常にうまい形でやっていた 部分があったと思うんです。それはよかった点なんですけど、ただ、こういうところ、質疑応答で、余り深入りして聞いても、相手から答えが出てこないことっ てあるんです。例えば、その資料について、そのあとに、そんな何人かしか聞いてないようなエビデンス、証拠資料として根拠が薄いんじゃないんですかと相手 に聞いてたんですけども、それを相手に聞いてもしょうがない。相手は、根拠が薄い、はい、そうですって答えるわけがない。だから、そういうところは聞いて も仕方がないので、聞かなくていいですね。それは次のスピーチで言えばいい。だから、エビデンスの中身として、それはどうやって、何人に聞いたんですか。 どのぐらいの人に聞いたんですか。本当にこれ、客観的な証拠資料なんですかというようなところは相手に対して確認をとればいいと思うんですね。エビデンス の中身、あるいは議論の中身について、もう一度、確認するというところは、非常にいいですね。それは、次のスピーチで使うというのも非常によかったんです けども、余りそれ以上、深入りしても、きっといい答えは出てこなくなるんじゃないかなと思います。余り、質疑応答のところで議論しない。質疑応答のところ はあくまでも質疑。聞いて答えを引き出すという。そこで議論して、反論しようとするというのは、余り好ましくないんじゃないかなと。
 最後ですけど、最後に、ディベートの試合では、新出議論というのがあって、これはルールにも書いてあると思うんですけども、例えば、反駁になってから新 しいことを言い出すのか、あるいは、第1反駁でも本当はできた議論を第2反駁で言い出す。そういったことというのは、一応、ルール上、ダメっていうことに なってるんです。
 それを踏まえると、最後に、どんなにうまいスピーチをしても、もっと前の段階、第1反駁でそれは議論できたんじゃない、それは出せたんじゃないかという 議論については、恐らく、ジャッジの人は、考慮から外して考えざるを得なくなるんですね。そういったところについては、もう一度、気をつけてやるといいと 思うんです。
 そう考えると、結構、否定側がこのフォーマットのディベートの場合、第2立論と第1反駁が続けてあるわけですね。そうすると、6分プラス4分という10 分間、続けてスピーチを否定側ってできるんです。ネガティブブロックってよく言うんですけども、10分間されたスピーチを、今度は肯定側というのは、たっ た4分で返さなきゃいけない。肯定側立論は4分で10分分を返さなきゃいけない。ここ非常にきついんです。この肯定側が、いかに満遍なく全部、触れるかと いうのが、恐らく肯定側の第1反駁、非常に重要な仕事に、このフォーマットは出てるんじゃないかなと・・・。そこをぜひ、覚えておくとこれからのいいディ ベートができるんじゃないかなと思います。
 でも、こうやって、今回、決勝戦はあれですけども、予選の試合も、僕もジャッジをさせてもらったんですけど、非常に、こういう道州制って難しいテーマでディベートできる優秀な高校生を見て、ぜひ、そういう人に九大法学部に入って政治学をやってほしいなと思いました。
 どうもありがとうございました。